うたうのをやめません第1回

何オタクか?と問われて、自分が唯一自信をもっていえること、それはゲームミュージックオタクだということ。幼少の頃からゲームミュージックをこよなく愛し、これまでに趣味として集めたゲームサントラ、ゲーム関連CDはおそらく500枚以上。そんな魚屋スイソがゲームミュージックソムリエとして皆さんへゲームミュージックをおすすめしていこうという個人コラム「うたうのをやめません」、テーマに沿って毎回3つほど紹介していこうと思います。第1回はツユサキさんからお題をいただきました。

傷ついた心をなぐさめるゲームミュージック(お題:ツユサキ)

エバーグリーン - 天地創造 - 小林美代子

まずはSFCの名RPGから一曲、開発はクインテットです。物語序盤、地裏から地上へと出た先は、ただただ荒れ果てた大地が広がり、淀んだ空気の流れる、およそ地球とは言えない、魔物以外には何一つ生命らしい生命のない世界、そこではじめに主人公は、枯れた巨木の洞窟へ向かい、植物の命を解き放ちます。すると雨が降り、タンポポが咲き、綿毛が飛んで、世界が緑に覆われていく……、天地創造はドット絵の美麗さと壮大な音楽とが相まって、演出に関しても評価の高いゲームですが、中でもこれは作中きっての名演出、名シーンなのではないでしょうか。そして場面が戻ると、枯れ切っていた巨木は青々と茂り、荒野は草原へと変わっています。そのとき流れるのが、この「エバーグリーン」という曲です。プレイヤーは、このとき初めて『天地創造』というゲームの核心に触れ、旅の目的を実感するのです。このゲームは後半になるにつれ、重いテーマが圧し掛かり、悲劇的な出来事も多々起こります、ですがこのシーンを思い出せば、きっと心は浄化されるはず。サントラ収録の、曳地正則によるアレンジ版も音色がパワーアップしていて、イージーリスニングとしてもじっくり聴けます。同タイトルではフィールド曲である「さらなる広い世界へ」、物語を進め二度目に聴いた時には涙流さずにはいられない「帰るべき所」、EDである「帰路」も今回のテーマ的にはオススメ。傷つき、心が荒んだときこそ、そうだ、地球、つくろう。

羊水の海 (夜明けの玄関 Ver.) - 夜明けの口笛吹き - 奥山キイチ

まさかのフリーゲームです。フリーゲームも好きで、特にツクール製のRPGはかなりの数プレイしたのですが、この『夜明けの口笛吹き』は自分の中で一、二を争う名作として心に残っています。システム的に目立ったものもなく、ストーリーの内容も不可解なため、いわゆる雰囲気ゲーとして処理されがちですが、独特の世界観には一口では語れない魅力があります。というのも、思い返したときに、ゲームそのものの世界観はもちろん、そこからイメージされたプレイヤーの自身の世界観に、より魅力を感じるからです。なので個人的には、フリーゲームということもあり、ボリュームもさほど多くないため、是非ともプレイして自分だけの世界観を構築してもらいたいと思っています。その際は、ゲーム内の住人の台詞の端々にまで目を通すのを忘れずに。ちなみに羊水の海とは、ゲームをはじめて一番最初のマップの名前です。夜明けの玄関バージョンのBGMは物語後半に聴くことができます。その頃には、この曲に対して、ふと全てから解放されたような、そして全てを失ったような、不思議な感覚を覚えるのではないでしょうか。また動画ですが、適切なものが見当たらなかったのでやむを得ず実況プレイ動画を貼っています。BGMも聴き取り辛いです。ゲームはこちら(http://kiiiichi.sakura.ne.jp/yoake.html)でダウンロードできます。音楽ファイルも一緒に入ってます。元々MIDIなのですが、自分はMP3として録音したものを今でもプレイヤーで聴いています。ゲーム製作者本人による作曲で、全体的にダウナー、その上かなり奇妙な曲ばかりです。

209ばんどうろ (昼) - ポケットモンスター ダイヤモンド・パール - 佐藤仁美

ポケモンは『ダイヤモンド・パール』(以降DP)、第四世代において、対戦・育成環境に飛躍的な進化が見られました。またWifi対戦が可能になり、絶大な普及台数を誇るニンテンドーDSというプラットフォームの手軽さも伴って、ポケモンを単なるRPGではなく対戦ゲームとして遊ぶひとが増えました。中には、ポケモンのステータスの数値に細かな調整を施し、対人戦においての勝利をより確実にするために日夜ポケモンの育成・研究に取り組む人々も多くいました。彼らは普通、まず理想のステータスをもったポケモンが産まれるまで何十、何百とポケモンの卵を孵化させます。卵を孵化させるためには、マップをひたすら歩き回り、歩数を稼がなければいけません。ポケモンの卵はゲーム内の育て屋という施設で入手するのですが、このBGMの流れる209番道路はその育て屋があり、また孵化までの歩数を稼ぐためにはお誂え向きな直線的なマップ構造をしているため、卵を抱えた廃人トレーナーが自転車に乗ってひたすら往復し続ける様子から、いつしか廃人ロードと呼ばれるようになりました。かくいう自分もDPの頃からポケモン廃人でしてね。どんなに嫌なことがあっても(対戦でボロクソに負けても)、廃人ロードでこの曲を聴きながら無心でポケモンを孵化させていると、不思議とまたこれから頑張ろう(次はこのポケモンで絶対勝つ)という気になってくるのです。『ハートゴールドソウルシルバー』ではコガネシティと34番道路、『ブラック・ホワイト』及び『ブラック2・ホワイト2』では3番道路とスカイアローブリッジが廃人ロードとしてお馴染みですが、BGM的にはDPの209番道路が最も癒し効果が高い気がします。

コラム「うたうのをやめません」ではテーマを常に募集しています。どなたでも、何度でも構いません。コメント欄にてお待ちしております。
第2回は壊れたいときにききたいゲームミュージック(お題:sample)を予定。